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二 人間が貴いのは人倫道徳があるゆえに

言葉の中に天倫という言葉がありますが、皆さんは天倫という言葉を知っていますか? 天倫というのは、宗教的な術語です。人理道徳という言葉は聞いたことはあっても、天倫道徳という言葉は聞いたことがないでしょう。それでは、人倫道徳の起源はどこにあるのでしょう? 大韓民国の憲法ですか? その起源を掘り下げていくと、良心にその根拠があります。

今日の法は、ローマ法を基礎として作られており、ローマ法が現在の世界文化の下地となっていると言えますが、人倫道徳はどこまでも良心にその根拠があります。法よりも、良心なのです。

では良心の基礎は何か? 善なのです。善を標準としているのです。善から外れて過ちを犯したときは、良心がその過ちを是正していくのです。そして、純粋な良心と一致する、普遍的な社会体制を形成しようとするので、法令も必要です。ですから、結局人倫はどこに根拠をおいているのか? 天倫に根拠をおいているのです。(三三・四四)

人間が貴いのは、人倫道徳があるためです。人倫というのは、人と人の関係をいうのです。一人をめぐって人倫とはいいません。人倫というのは、二人以上いてこそ成立するのです。男と女が結婚した家庭から、社会の倫理という言葉が成立するのです。倫理とは何か? 人間関係の道理であり、法則なのです。(一三六・二〇八)

皆さん、人倫道徳というでしょう。人倫が何を通して形成されるのかというと、情を通して形成されます。そうではありませんか? 母や父、家族関係とか、道徳観念とか、社会制度とか、秩序とかいうのは、すべて情緒的な面です。先に情を感じたそのことが長く続いたとか、次元が高いというなら、そこに頭を下げるべきなのです。皆さんはそれを知るべきです。人倫形成の動機は何からなのか? 情からなのです。親が子供を愛するところから人倫が始まります。そうでしょう? 子供が親を愛するところから、真の人間関係は成立するのです。(六四・一二四)