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ステパノは知恵のある人ではありませんでした。冒険性があり、少し足りないような人でした。しかし、生命を懸ける時は、見事に決心していく気質がありました。このような気質が、殉教者としての要素になったのです。それにより、彼はキリスト教で、一番目の殉教者になったのです。このような立場で見たならば、ステパノは他の人より、はるかに高い位置にいることは事実です。(一八・二八二)
皆さん、ステパノを知っているでしょう? 彼は無学な人です。大変愚かな人だというのです。石を投げられて死ぬことを知っていながら入っていったのですから、愚かなやつではないですか。皆さんも考えてみなさい。人はみな、一度は死ぬのです。何日も病んで苦痛を受けて死ぬよりも、銃弾に当たって死ぬとか、また、公的な立場で鞭打たれて死ぬことができれば……。死ぬのは同じだというのです。どれが一番楽かといえば、公的なことをして死ぬのが楽なのです。そのような考えをしなければなりません。(八二・一八〇)